like electricity

舞踊教育に携わるdance educator。バレエ関係がメインだけれど、ダンス、アート、芸術、教育、人間などなど日々考えることの発信の場。読書感想文もあり。ビビビっとくる何かとロマンを求めて。

「アーティスト症候群」を読んで

先日のブログにも一瞬出てきた本書。

「パフォーマンスと身体表現の違いとは」といった内容の記事にこの本のことが書いてあり、「アーティスト症候群」とも呼べる現象の裏ではなにが起きているのかも知りたくて講読。基本的にはビジュアルアートと呼ばれる絵画や彫刻などのジャンルがメインだけれども、「アーティスト」という響きの連想させる幻想とかについての指摘がぐさぐさ。

いわゆる、「芸術家」という意味以外で使われる「アーティスト」という肩書き。

わたしも常々疑問に思っていた、ミュージシャンをアーティストと呼ぶ、あれ。別にミュージシャンがアーティストじゃないと言ってるわけではないけど、「この人がアーティストだったら、実際にアーティストのあの人は神か」といった具合に思うことも。(本著にもユーミンの引用が面白かった)

あまりの痛快さが面白くて吹きそうになることもしばしば。なんというか、美大生あるある、みたいなところもあるのだろうけど、別に美大生に限ったことではなく、アート系な大学生とかも超あるあるなのではないだろうか。

著者は「元アーティスト」であり、本人もそういう道を通ってきたからこそぐさぐさ言えるのだろうとも思う。別にバカにしてるわけではないんだと思うけど、そこを指摘しないとそもそもなぜそれが問題なのか、あるいはこの現象は一体どういうことなのか、ということが見出せないということでもある。

それとは別に、なぜ「アーティスト」という言葉が多用されるようになったのか、を近代芸術の発展をふまえて説明してくれるので、現在、芸術と言われるもの(アートと呼ばれるものでもいいけど)がどこまできたのか。また日本においてそれがどう使われるようになったのか、を振り返ってもいるのでそこはそこで興味深い。

日本における「職人」と「アーティスト」の違いなども興味深いし、「誰でもピカソ」と「なんでも鑑定団」の比較もなるほど。

これを読んだみなさんいろいろとご意見あるのでしょうが、わたしが感じたのは、やはり元アーティストである著者の視点は本当にその現場を考える上では有意義な、というか参考になるものだとわたしは思う。

外の人は所詮、外の人でどんなものかなんて想像してみるしかない。

その世界の人がそれを語ってくれるのは、その人の視点に傾倒する危険性はあるにしても、やはり貴重なインプットにはなる。

近い畑のダンスについてもいろいろ考えどころですな。